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live at the indoor
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検索結果7件

タグ「エレクトロニカ」のレビュー

「透明感や氷のような冷たさを感じる音響」や「ビビッドに歪んだ電子音」を大幅に取り入れた5thアルバム。

一つ一つの音の強度が格段に上がっており前作・前々作に存在した「閉ざされた感」を打破しているという印象で、エレクトロニカやヒップホップのからの影響を曲に反映させポップ・ミュージックとして明らかな飛躍を遂げていると感じる。

ただしアンダーワールド(Underworld)が元気のよい健全なダンスミュージックをやるはずもなく「ビビッドに歪んだ電子音」や「氷のような冷たい音響」がさらに活きるように「不吉な影」や「どんよりした雨雲」を連想するダークなサウンドが今作でも聴くことができる。

ダークなサウンドの登場頻度はこれまでの作品と比較して減ってはいるのだが、登場する回数が少ないほどにそのダークさが際立つという構造になっている。このダークさこそが「不機嫌なダンスミュージック」を鳴らす彼らの最大の個性と言えるだろう。

    「要点」

  • ポップ・ミュージックとして明らかな飛躍を遂げている
  • エレクトロニカやヒップホップからの影響を曲に反映させた
  • ダークなサウンドは登場回数こそ減ったがキーであることにかわりない

「曲解説」

1 Cups

前作・前々作とは明らかに異なる透明感を感じるアッパーチューン。ダークな質感のミニマムなビートの上を氷のような質感の電子音が踊る。 ボーカルは相変わらず無機質なロボット風ボイスである。中盤以降はBPMが早くなりダンスミュージックらしいアッパーさを持ち始める。終盤は「電子バリア」のような歪みと「ネオンカラーのビーム光線」のようなシンセが空間を支配する展開となり、様々な人の声を早送りしたような音響も挿入される。
2 Push

「難解なエレクトロニカ」のような立体的でミニマムなビートと冷たいピアノがリフレインされる曲。カール・ハイドのボーカルはメランコリックでダークなラップのような趣である(2:10〜)「不吉な影」のようなもやっとした電子音が遠くのほうでダークに鳴り響く。終盤は「電撃」のような電子音などが存在感を発揮するが最後は唐突に途切れるように終わる。
3 Jumbo

「夏の海」を思わせる透明でブルーな音響と「ビビッドに歪んだビート」が共存しているサウンドでどことなく三ツ矢サイダーを連想する曲。中盤からは「きらめくバブル」のような電子音がループされ目の前が光で溢れる。アナログな音は入っていないが「メロウな80年代ギターポップ」を聴いた後のような清涼感と晴れやかさを感じる。
4 Shudder / King Of Snake

「電撃」のような切り裂く電子音がリフレインされるアッパーチューン(2:50〜)清涼感を感じるピアノ風ミニマムリフが「電撃」のような電子音をさらに激しく響かせる。カール・ハイドのボーカルはマークパンサー的な「ファンキーな語り」のようなものとなっており、中盤以降はストリート感のある音の断片が挿入され曲にさらなるスピードを与えている。最後はシリアスな雰囲気が漂う独り言で幕を閉じる。
5 Winjer

「空を飛んでいる」ような浮遊感となんとも言えない不穏さが同居している曲。ビートは「鼓動をテクノ化」したような質感であり、ボーカルは囁くような呪文風ボイスである。
6 Skym

「マニアックな儀式」のような雰囲気をもつ幽玄なバラード。「地球儀を指でクルクル回す」ような質感の電子音がループされ、ボーカルラインは「異空間」のように不穏である。
7 Bruce Lee

金属的な響きを持つ無機質なアンダーワールド(Underworld)流ヒップホップ。DJスクラッチやカール・ハイドのラップも歪んでおり、まるでインダストリアルロックを聴いているような気分になる曲(3:47〜)熱量が高くファンキーな展開の裏で「どんよりした雨雲」のような陰鬱な電子音が姿を表す。この辺りのニューウェイブ的センスはアンダーワールド(Underworld)ならでは。
9 Push Downstairs

「氷の世界」のような冷たいサウンドをバックにメロディックな呪文が不穏に鳴り響くミステリアスな曲。
10 Something Like a Mama

Something Like a Mama(ママのようなもの)というタイトルとは裏腹に「何もない真っ白な空間」のような空虚さをもつサウンドが展開される。 中盤以降はビートの粒がタイトに鳴り響き、歪んだ電子音なども登場するが空虚な雰囲気は終始保たれる。
11 Moaner

「酸性雨が降るジャングル」のような質感の極彩色なアシッドハウス。リズムはディープな四つ打ちでビビッドに歪んだ電子音はリスナーの頭の中で縦横無尽に暴れる。カール・ハイドのボーカルは扇動のようなテンションとなっている

「透明感や氷のような冷たさを感じる音響」や「ビビッドに歪んだ電子音」を大幅に取り入れた5thアルバム。 一つ一つの音の強度が格段に上がっており前作・前々作に存在した「閉ざされた感」を打破しているという印象で、エレクトロニカやヒップホップのからの影響を曲に反映させポップ・ミュージックとして明らかな飛躍を遂げていると感じる。 ただしアンダーワールド(Underworld)が元気のよい健全なダンスミュー

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2000年にレディオヘッド(Radiohead)が発表した今作Kid Aは音楽シーンに衝撃を与えた。本作にはこれまで彼らの代名詞であったリスナーの深部まで届くエモーショナルなボーカルラインや「静」→「動」のダイナミックなバンドサウンドがほとんど登場せず、エレクトロニカ、アブストラクトHIP HOP、ポストロックなどの文脈を大胆に導入し、彼らの描きたいイメージを音でストイックに描ききっている。

前作「Ok Computer」に存在していた「荒涼とした世界観」をさらにディープにするには、ギターロックのフォーマットだけではもはや無理があったのだろう。本作Kid Aを聴いていると終始、「何もない真っ白な空間」や「氷の世界」が目に浮かんでくる「無」の場所で音楽的自由を究極に突き詰める本作はシンプルなギターロックよりはるかにプリミティブだと思う。

    「要点」

  • エレクトロニカ以降の音響で描かれた世界観
  • 絶対零度の感情
  • 音楽史に残る問題作

「曲解説」

1 Everything in Its Right Place

ミニマムな電子音とトム・ヨーク(vo ,g)の声をサンプリングした「呪文」のような音で幕をあける。作品全編に言えることだが前作に見られた荒涼とした雰囲気をさらをディープにしたような幽玄な空気感で全てが凍りついた氷河の中でポツンと佇むトム・ヨーク(vo ,g)が目に浮かぶ「全てのものはあるべきところに」を繰り返す詞の世界も意味深。
2 Kid A

「氷」のようなアンビエントな音色は誰もいない真っ白な空間を連想させる。彼らの最大の武器であったリスナーの感情を揺さぶるエモーショナルなボーカルラインはこの真っ白な空間には存在せず、ただ風だけが流れている。トム・ヨーク(vo ,g)のボーカルにはまるで老人の囁きに聴こえるようなエフェクトが掛けられておりボーカルラインの断片はまるでお経のようにすら聴こえる。そこに無機質で鋭角的なポストロック的なリズムが加わるが、ギターロックバンドらしいダイナミズムとは無縁の淡々とした展開を見せる。そして最後は透明なベールのような電子音に包まれ目に映る全てが無と化す。
3 The National Anthem

サンプリングされたウッドベース(多分)のミニマムなフレーズが終始鳴り響き、不穏さや浮遊感を感じる多様な音が煙のように浮かんでは消える。ホーンセクションを大胆にフィーチャーした「夢の国に出てくる軍隊の行進曲」のような曲。
4 How to Disappear Completely

死後の世界に迷い込んだような幽玄さのある曲。誰もいない真っ白な空間であまり抑揚のないメロディーをトム・ヨーク(vo ,g)が弾き語る。その後、不穏なストリングスと「ボタンのかけ違い」のようなミニマムな電子音が出てきて曲はさらに深くなる。(3:30〜)から聴けるボーカルラインは美しくエモーショナルだが前作に感じたような熱量はなく嘆きのように聴こえる。
8 Idioteque

レディオヘッド流アブストラクトHIP HOP。「車が宙に浮いて走っている近未来の高速道路」を連想するスピード感があり「氷河期がやってくる」という脅迫観念のようなトム・ヨーク(vo ,g)の鬼気迫るラップ(?)が凄まじい。「Here I’m allowed everything all of the time」の箇所は、トム・ヨーク(vo ,g)とエド・オブライエン(g)によるハモった最高級のボーカルラインが聴ける。
9 Morning Bell

神経質なブレイクビーツと牧歌的な電子音が終始鳴り響く曲(3:05〜)トム・ヨーク(vo ,g)の声の残響が四方八方から鳴り響きカオスの様相を呈するが、やがて全ては過ぎ去り目の前には誰もいない「氷の世界」だけが広がっている。

2000年にレディオヘッド(Radiohead)が発表した今作Kid Aは音楽シーンに衝撃を与えた。本作にはこれまで彼らの代名詞であったリスナーの深部まで届くエモーショナルなボーカルラインや「静」→「動」のダイナミックなバンドサウンドがほとんど登場せず、エレクトロニカ、アブストラクトHIP HOP、ポストロックなどの文脈を大胆に導入し、彼らの描きたいイメージを音でストイックに描ききっている。 前作

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