「日本の個性派バンドって誰かいないかな?!」と考えたところすぐに頭に浮かんできた米米CLUB。大人数のグループかつ多才なカールスモーキー石井(石井 竜也)が率いるグループという事もあり、演劇的なアプローチをするグループだという先入観があったのだが、本作を聴いてその先入観はあっさり砕け散った。
本作には「アジアン」「トロピカル」な世界にトリップできるようなカラフルな音を使った良質なポップ・ミュージックが収録されている。「テクノポップ」「シティポップ」「ファンク」「ニューウェイブ」etc。サビのボーカルメロディーをシンセなどと絡めてBPM以上の体感速度を感じるアプローチは大変興味深く、87年にこれだけの多面的なアプローチをしているグループが日本にいたことに衝撃を受けている。
「曲解説」
1 Only As A Friend
タイトで淡々としたリズムマシーンが時代を感じるプラスティックな質感のシティポップ。
(0:57〜)サビは低音を強調したリズミカルなダンスビートと清涼感のある炭酸飲料のようなシンセサウンドが重なり、
BPM以上のスピード感を感じることが出来る(2:55〜)「島国の子供たちがはしゃいでいる」ようなパーカッションや人力ブレイクビーツの重なりが挿入されその後はサックスによるソロパートが登場する。
2 sûre danse
アジアンな祭のような雰囲気を醸し出す曲。ウォームなベースリフが終始鳴り響き、ホーンの音色はこの曲に祝祭性を加えている
(0:58〜)トロピカルな電子音や空間的なカッティングギターが絡みアジアンな雰囲気が出来上がりサビに突入。サビのボーカルラインはファンキーでノリノリ(1:20〜)人力ブレイクビーツのようなビートと「ハッ、ハッハッ」というコミカルな声が挿入されアクセントになっている。
(2:25〜) 夜の夜景を見ながら独り言を呟くような静かなパートがあり、その後、カラフルなホーンが鳴り響きそのまま曲はエンディングに向けて最高潮を迎える。
3 浪漫飛行
ミニマムな低音が心地よいダンサブルなテクノポップ。(0:40〜)大ヒットも納得の神レベルのボーカルラインが登場。窓から入り込む「そよ風のような」シンセサウンドが曲を柔らかく包みこむ(2:26〜)淡々と流れるビートの上を流星を連想するシンセが流れ、終盤はクラシカルなストリングスも登場し浮遊感を増す展開。
4 Collection
ザ・キュアー(The Cure)のような耽美な質感を感じるPOPチューン。真夏の夜のような静けさをもつ曲だがサビは不思議なスピード感を感じる(0:50〜)ボーカルライン自体は淡々としていて渋いがザ・キュアー(The Cure)風の空間ギターサウンドがスピード感を与えるサビ(1:46〜)少しの間、静寂が流れド派手ホーンソロが登場して終盤は呪文のように「Collection」というワードがリフレインされる。
6 Make Up
複雑でタイトなビートが反復されるファンクチューン。ゴージャスなホーンと煌びやかなシンセがバブルを連想させ、底からドンドンと突き上げるファンクなベースが脳みそを刺激する(1:18〜)サビでは七色のシンセ音色が体感速度を上げ、中盤以降は複雑なビートがよりタイトになりレッドツェッペリンのような「ドラムリフ」がファンクの強度を高める。
8 Hollywood Smile
ジャジーなピアノとソウルフルなボーカルを中心に展開される(1:24〜)どこまでも続く星空のような煌びやかなシンセが静寂を運んでくる(2:00〜)ドラムの連打から生命力の塊のような分厚いホーンソロが鳴り響きそのままエンディングを迎える。
9 Hustle Blood
スライムのように潤ったベースラインが攻めまくるシンセポップ。(0:40〜)ボーカルーラインがカラフルなシンセフレーズと絡むことにより極彩色と化すサビ(2:08〜)煌びやかな光を感じるギターソロが登場。全編を通してニュー・オーダー(New Order)に通じる音の質感。