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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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ジャパニーズロックの土台を作り後続に多大すぎる影響を与えたボウイ(BOØWY)のデビューアルバム。

「スタジオに行って演奏しただけ状態のサウンドクオリティに布袋寅泰が失望した」という逸話がある。 本作の反省を活かして布袋寅泰がスタジオワークに本格的に意識を向けはじめるキッカケになった。本作の存在なくして色んな意味で後のボウイ(BOØWY)サウンドは存在しない為、まさに原点と言えるアルバムである。

本作はボウイ(BOØWY)が6人編成の時にリリースされた唯一のアルバムであり、サウンドのクオリティに関しては後のアルバムと比較した場合に明らかに劣る事は間違いないのだが、「学校」「教師」「サラリーマン」に対する「強烈なフラストレーション」を叩きつける衝動的でパンチの効いた歌詞がプラスティックで未完成なパンク風サウンドを強引に引っ張っているようなイメージである。

「サラリーマンを小馬鹿にした歌詞」で溢れる本作を現在リリースすれば間違いなくSNSで大炎上するであろう。また布袋寅泰(g)のギターワークもまだ本領を発揮しているとは言えず、おそらくではあるが「パンク以降」の流れ中でまだ「明確な答え」が見えていないという印象を受ける。

    「要点」

  • ・「スタジオに行って演奏しただけ状態のサウンドクオリティに布袋寅泰が失望した」という逸話がある。
  • ・「サラリーマンを小馬鹿にした歌詞」で溢れる本作を現在リリースすれば間違いなくSNSで大炎上するであろう。

「曲解説」

2 IMAGE DOWN

「平行移動のコード進行」によって構成されるイントロのギターリフが印象的なボウイ(BOØWY)の代表曲。 ドラムのビートはまるで「ロボットのパンチ」のようにタイトである。歌詞の内容は「尻の軽い女に対する強烈な皮肉とディスり」であり、「英語数学まるでダメだけどあっちのほうはインテリジェンスかい?!」というラインには何とも言えないユーモアがある。終盤は熱量を増したビートの上で氷室京介(vo)がタイトルである「IMAGE DOWN」というフレーズを「鬼」のように連呼する。
3 SCHOOL OUT

偉そうに説教してみても結局は「自分の身の保身以外何も考えていない先公」(ツッパリ的に言う)に対する苛立ちを元不良の氷室京介(vo)が「決まったレールの中でズレちゃう不良達」の代わりに吐き捨てるシンプルなパンクチューン。布袋寅泰(g)のギターフレーズはシンプルではあるが他のパンクギタリストにはありえない色彩を感じる(1:57〜)何から何まで処分で片付ける学校という名の腐ったシステムに対して氷室京介(vo)が「怒りを通り越した哀れ」をもって「本当の事を見失うぞ」と警告する静のパートが挿入される。
4 ÉLITE

腐りきったエリートサラリーマンに対する怒りをぶちまけたパンクチューン。氷室京介(vo)はサラリーマンをした事がないのに何故?!ここまで生々しい歌詞を書けるのだろうか?!。おそらくであるが、氷室京介(vo)という人は音楽云々ではなく「フラストレーションをブチまける為の手段」としてロックに興味をもったのではないだろうか?!教師やサラリーマンなど「自分には到底理解が及ばないこれらの人たちに対する嫌悪」が若かりし頃の氷室京介(vo)に大きなイマジネーションとある種のモチベーションを与えたに違いない。
6 NO N.Y.

「女神」のようなbeauty faceをもつ女を愛してしまった男の心情を歌っているプラスティックなフィーリングのポップチューン。「あいつを愛したらNY、NY」というラインは今聴いても全く意味不明である。歌詞はサックスプレイヤーである深沢和明が担当。下世話な話ではあるが、深沢氏はこの曲の作詞印税だけで相当な額を手にしているハズである。
7 MASS AGE

布袋寅泰(g)のギターが「90年代UKギターロック」のような音色を聴かせる珍しいタイプの曲。歌詞は「腰を下ろすのはまだまだ先」なるラインなどからおそらくではあるが、腐ったサラリーマンを強烈に小馬鹿にしたものであると思われる。まくし立てるような氷室京介(vo)のボーカルのバックでは牧歌的とも言える深沢和明(sax)のサックスが響き渡る(1:20〜、2:10〜)「woo、woo、woo、woo」という布袋寅泰(g)のコーラスは少し狂気じみた脱力感を感じる(1:40〜)「ミスターダウンピッキング」こと松井常松(b)がスラップを披露する立体的なベースソロを奏でる。
9 RATS

調子の良い時だけ「飲み行こう」などと言ってきて都合が悪くなれば「知らんフリ」という、よくありがちなサラリーマン上司を完全に小馬鹿にしている曲。サウンドは最小限の音数で構成されており、松井常松(b)の立体的なベースラインが非常によく目立つ。所々でエレクトロニカのような透明な電子音が登場し曲に色彩を与えている。この電子音の配置は「音楽的多重人格」を自称する布袋寅泰(g)のチョイスによるものであろう。
10 MORAL

「人間の暗部」にスポットを当てた歌詞は現在ではリリースが難しい類であり、正直そう何度も聴くような内容ではないが、おそらくではあるが「人の不幸に群がるマスコミ」や「偽善者」を痛烈に皮肉った内容であると思われる。おそらくではあるが、現在の氷室京介(vo)はこの曲をリリースした事を後悔しているであろう。
11 GUERRILLA

「9 RATS」同様にサラリーマンを完全に小馬鹿にしている曲。「山ほど仕事が待っているのか、いないよな」というラインは働くふりだけしている「働かないおじさん」の腐った実情をズバリ指摘している。また仕事終わりのビアホールで「振り向く女は会社の仲間さ」というラインはコント的であり「頭を使った覚えはないのさ」「悩む事などありもしないのさ」などのラインはやりすぎでもはや笑えない。氷室京介(vo)のサラリーマンに対する嫌悪感と苛立ちは相当なものである。
13 ENDLESS

「魔界の入り口に立っている」かのような不穏な音響を前面に押し出したシュールとしか言いようのない曲。 (0:20〜)透明でメロウなポップソングに移行するまさかの展開を見せ、氷室京介(vo)の歌声は「教師やサラリーマンに対する苛立ちを吐き捨てた人物」と同様とは思えない程に優しくそして温かい。

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