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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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「シューゲイザー」「ポストロック」「オルタナ」「インダストリアル」などの前衛的なロックミュージックからの影響を彼らの独自のディープで耽美的なサウンドに反映させた3rdアルバム。

相変わらずのクオリティの高さを見せるが「ダビーなリズムアプローチ」「ジャジーなテイスト」が減少、 また「灼熱の砂漠」や「インド」を連想するような質感の音が多く登場しサイケデリックな表現の模索も感じ取ることができる。

この「前衛的なロックへの接近」はグループ内で亀裂を生み出しメンバーのマッシュルームが脱退する。1st 2ndアルバムで圧倒的に「クールな新感覚サウンド」を鳴らした彼らがクオリティを落とさずに次なる1手を打つことは並大抵ではなく、実際、今作は2ndアルバム「Protection」から4年の歳月を経た98年にリリースされている。

筆者としては苦悩の末に生まれたであろう今作の変化をポジティヴに受け止めている。

    「要点」

  • 前衛的なロックミュージックに影響を受けたサウンド
  • ロックへの接近」はグループ内で亀裂を生み出しメンバーが脱退
  • サイケデリックな表現の模索

「曲解説」

1 Angel

ダイナミズムを感じる歪んだオルタナなギターサウンドを大胆に導入した破壊的な曲で、ディープな質感のシンプルなリズムアプローチと「灼熱の砂漠」のような空気感が特徴である。「love you , love you , love you」というコーラスはディレイをかけたように規則正しくリフレインされる。
2 Risingson

マッシヴ・アタック(Massive Attack)クラシックとも言えるダビーなヒップホップ。「雨雲」のようなダークでディープなベースラインがゆったりとリフレインされる(2:47〜 , 3:16〜)ディープな空気感の中、アルペジオ風サウンドが耽美的な美しい旋律を奏でる。この旋律はこの曲のキーポイントといっていい位に存在感がある。中盤以降はサイケなギターサウンド風の音響も絡まり熱力を高めていく。
3 Teardrop

「インド」を連想するサイケな音響を持つミドルテンポの耽美バラード(3:38〜)シューゲイザーのような音響を持つギターサウンドが「地平線」のようにどこまでも伸びていく。終盤は「雨雲」のような質感のミニマムなピアノが曲にダークな彩りを与える。
4 Inertia Creeps

「乱反射する光」のようなイントロから「ひどい二日酔い」のような質感を持つ展開に移行するダークソング。ミニマムでサイケな残響が次から次に現れてリスナーを見知らぬ異国に導く(3:12〜)「熱帯夜」のような気怠い質感のギターサウンドが転がるようにリフレインされる。終盤はアシッドハウスのような歪んだ低音が存在感を増し曲に弾力感を与える。
5 Exchange

「夢の国」のようなもやっとした音響のシンセポップなインスト。「空に浮かぶ」ような浮遊感と「大地を思い切り蹴る」ような質感のブレイクビーツの対比が印象的であり、最後はバグった電話のコール音が唐突に登場するミステリアスな展開を見せる。
6 Dissolved Girl

トータス(Tortoise)の曲をマッシヴ・アタック(Massive Attack)がリミックスしたような曲。ダークな空気感の中を立体的で躍動感のある音が次から次に現れる展開から(2:38〜)グランジバンドもびっくりの「全てを焼き尽くす」ようなディストーションギターが炸裂(5:04〜)終幕感を感じるシリアスなアルペジオが「時を刻む針」のように静かに流れる。
8 Black Milk

「氷の世界」のような質感のトラックをバックに「女神」のような透明な声を持つボーカリストがメランコリックに囁くボーカルラインを聴かせる。時折、挿入されるソニックなDJスクラッチはポーティスヘッド(Portishead)と共通する質感である。
9 Mezzanine

「サイケな音や歪んだ音響で構成されたアバンギャルドな貼り絵」のような曲。この曲でも「太陽光線」のようにどこまでも伸びる直線的なギターサウンドやインダストリアルロックのように強烈に歪んだ音響が登場する。
11 (Exchange)

「曇りの早朝」のような気怠く透明な空気感をもつ曲。「濃厚な煙」のようなシンセサウンドがサイケな質感を曲に与える。終盤はレコードに落とされた針が「小雨」のようなノイズを奏で静かに終わる。

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