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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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akko(vo)独特の透明感のある歌声の魅力をさらに引き立てるべくサウンドがクリアにそしてディープに進化した2ndアルバム。

耽美派UKアーティストからの影響が感じられる「3 My sweet lord」や「10 YES 〜free flower〜」などは前作に収録されていた曲とは明らかに異なる質感であり、歌詞はマイラバのブレイクを決定付けた神曲「5 Hello, Again 〜昔からある場所〜」で「大失恋を経験した男女の数年後を描いた」ようなイメージのものが多く喪失感を全面に押し出している。悲しいkissはまだ胸にあるのにアッパーなドライブで弾ける「5 Shuffle」メランコリックな気持ちを抱え苦笑いでも前に進もうとする「8 NOW AND THEN 〜失われた時を求めて〜」喪失感と真正面から向き合う内省的な「10 YES 〜free flower〜」など。

本作は90年代の日本のポップシーンの中でも異彩を放っており、喪失感を描きつつもリスナーに前向きな光を与える素晴らしい作品となっている。

    「要点」

  • ・歌詞は「5 Hello, Again 〜昔からある場所〜」で大失恋を経験した男女の数年後を描いたようなイメージのものが多い
  • ・サウンドがクリアにそしてディープに進化

「曲解説」

2 空の下で

「静寂の中をクリアでアンビエントな質感のアルペジオが踊るヴァース」と「ナチュラルでウォームなサビ」によって構成されるギターポップ。中盤以降は「空の下で」というフレーズにぴったりなストリングスが曲に涼しい爽やかな風を運んでくる。
3 My sweet lord

UK耽美派アーティスト・キュアー(CURE)のダークなポップソングをマイラバ流にアレンジしたような曲。akko(vo)のボーカルは脱力的なものとなっており「よく晴れた日のピクニック」のようである。歌詞に登場する「狂ったダンス」なるフレーズはUKニューウェイブを意識していると思われる。
5 Shuffle

「乗り気ではないドライブ」のような気だるさと「花束」のように華やかさが同居しているアッパーチューンで、終始ホーンセクションが曲に色彩を与えている。過去の悲しいキスを引きずり新しい季節に乗り遅れた主人公が、センチメンタルな心情を「愛とは宇宙の果てのようで」と文学的に語りつつも「涙の彼方へ行こう」と前向きなスタンスを示す歌詞が気だるくも華やかなサウンドと見事にマッチしている。
6 Naked

「深夜のオフィス街」のようなダークさと「プリズム」のような輝きを感じるサウンドがakko(vo)の歌声が持つ透明感をより引き立てている(4:40〜)エフェクトのかかった歪んだ声で歌われる「快楽のドアを叩く」というフレーズにはドキッとする。歌詞の内容はおそらくではあるが「いけない恋=不倫」をテーマにしていると思われる。
8 NOW AND THEN 〜失われた時を求めて〜

「シュールな夢の国」のようなサイケな音響がインパクト大のポップソング。歌詞は神曲「5 Hello, Again 〜昔からある場所〜」で失恋を経験した主人公が数年後に「過去の重くシリアスな恋愛感情」を内省し「苦笑いでも前に進もう」と 自分を奮い立たせるようなイメージである。「地球儀を回したらいくつもの街角でいくつもの君と出会える予感がした」というラインはセンチメンタルと喪失感が同居した素晴らしいラインである。この曲のギターサウンドは最小限の手数で曲に豊かなコクを与えている。終盤は静寂の後にサイケなハードロックサウンドが展開され、これまで脇役に徹していたギターがブルージーなソロパートを披露する。最後は不規則なピアノの旋律が「夢の終わり」のように鳴り響く。
10 YES 〜free flower〜

「水に浮かぶプリズム」のような透明感を感じるミニマムなギターロック。「青くサイケに揺らめく」ギターサウンドはミニマムな手数でマキシマムな効果を出している。akko(vo)の歌声は「波紋」のように揺らめき「夏に終わった恋」を内省する。「yes」というポジティヴワードがこんなにもメランコリックに響く曲はこれまで聴いたとこがない。

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