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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト
検索結果13件

タグ「インダストリアル」のレビュー

デビューアルバム以上に様々な音楽要素を取り入れた作品となっており、本格的な海外進出を意識して作成したであろうハードな曲も収録されている2ndアルバムで「X JAPANのギタリストhide」ではなくソロアーティストhideとして見事なオリジナリティを提示している。

「USインダストリアルロックに対する日本からの回答」とも言える「サイボーグロック」を音楽シーンに提案したhideであったが、hideから感じる「DJのような目利きセンス」をもったUSヘヴィロックアーティストはあまり見た(聴いた)事がないので、是非、hideには海外進出を果たして向こうでも大暴れしてほしかった。

筆者のイメージではあるがhideというアーティストは「自身(hide)が初めてロックミュージックを聴いた時に感じた衝撃をリスナーに提示」 するという事に最も大きなモチベーションがあるアーティストなのでは?と感じる。

    「要点」

  • ・hideから感じる「DJのような目利きセンス」をもったUSヘヴィロックアーティストはあまり見た(聴いた)事がないので、 是非、hideには海外進出を果たして向こうでも大暴れしてほしかった。
  • ・「X JAPANのギタリストhide」ではなくソロアーティストhideとして見事なオリジナリティを提示

「曲解説」

2 ERASE

ダンサブルなビートを感じる横ノリのロックチューンでギターサウンドには「DJスクラッチ」のような鋭角性がある。
3 限界破裂

ミニマムで性急なパンクサウンドにのせて「出会うのが遅すぎたせいで君を傷つけてしまう」というナイーヴな歌詞をアグレッシヴに歌い上げる曲(2:20〜)ギターソロは「メタリックに揺らめく」サイケサウンドとなっており、ギターソロの後には「迷走」のようなベースソロも披露される。
4 DAMAGE

「地下の実験室で行われる破壊的な実験」のような歪みチューン。冷静に聴いてみるとゆったりしたBPMのリフロックなのだが「ハイテンションでルナティックな歪みボーカル」が曲にBPMを大幅に上回るスピード感を与えている。
5 LEMONed I Scream (CHOCO-CHIP version)

ひんやりとしたサイケデリックを感じるドリーミーなギターポップ。サビのボーカルラインはフリッパーズ・ギター(Flipper’s Guitar)風であり、おしゃれカフェで流れていても違和感なくマッチすると思われる。「I scream」と「アイスクリーム」をかけた歌詞は脱力感すら感じさせる。
6 Hi-Ho

ラテンなビートを感じるダンサブルなロックチューンで「ハウスミュージックに影響を受けているグルーヴィーなUKロックバンド」のような雰囲気もある。歌詞は「無駄だらけだが天才肌であるアーティスト」に対するリスペクトをファンキーに言語化したようなイメージである。
7 FLAME

「ギターロック期のレディオヘッド(radiohead)のようなダイナミズム」を感じるオルタナチューン。激しいサウンドとは対照的にhideのボーカルは「何気ない日常」のように淡々としているが、歌詞は「悲しみは消えないけど、星の嘆きを聞けば小さな事だ」というラインからもわかるようにシリアスなものとなっている。
8 BEAUTY & STUPID

「恋」と「行為」をかけたアニマルな歌詞がインパクト大のノリノリな曲。先に惚れてしまい「追いかける側の苦悩」が詰まった歌詞だが、一度聴けばスグに覚えてしまう「突き刺さるポップネス」を感じる。
10 BACTERIA

バグった重力を感じるブチギレたサイボーグロック。終始「暴風雨」のような強烈なノイズが吹き荒れ「USヘヴィロック勢に対する宣戦布告」のようなサウンドとなっている。hideのボーカルは「ヒリヒリとしたメロディックな音響」のようである。
11 GOOD BYE

「手に持ちきれないもの全てにgood byeしよう」という前向きなのか後ろ向きなのかよくわからない不思議な歌詞が印象的でサウンドはローファイで「どんより曇った早朝」のような気だるさを感じる。
14 POSE

ブレイクビーツや四つ打ちを取り入れた凝ったリズムアプローチが印象的なダンサブルなヘヴィロック(1:35〜、3:10〜)「流れるアクエリアス」のような流麗なピアノの旋律が挿入されハードなサウンドの中に幻想の華が咲く。hideのボーカルは「デビル」のような凶暴さを感じさせるものとなっている。

デビューアルバム以上に様々な音楽要素を取り入れた作品となっており、本格的な海外進出を意識して作成したであろうハードな曲も収録されている2ndアルバムで「X JAPANのギタリストhide」ではなくソロアーティストhideとして見事なオリジナリティを提示している。 「USインダストリアルロックに対する日本からの回答」とも言える「サイボーグロック」を音楽シーンに提案したhideであったが、hideから

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X JAPANのカリスマギタリストhideのソロデビューアルバムであり「インダストリアル」「オルタナ」「グランジ」などのハードな歪みを大胆に取り入れた作風となっている。

hideの魅力はエッジのたったサウンドやマニアックな響きを主にしたサウンドを作りつつも、そこに「おもちゃ」や「ゲームセンター」のようなポップネスを反映できる点であろう。80年代UKギターポップのような「4 EYES LOVE YOU <T.T.VERSION>」ワルツ調のギターサウンドを響かせる「8 A STORY」などはhideの音楽的なキャパシティーの大きさを感じさせる。

「2 DICE」「13 TELL ME」のギターソロはエックスジャパン(X JAPAN)風のハモリフレーズでありhideからエックスジャパン(X JAPAN)ファンに対するプレゼントのようであり、「14 HONEY BLADE」における「神登場のミステリアスな語り」は後輩であるルナシー(LUNASEA)に対するhideからの「愛のあるイジリ」であると思われる。

    「要点」

  • ・エッジのたったサウンドやマニアックな響きを主にしたサウンドを作りつつも、 そこに「おもちゃ」や「ゲームセンター」のようなポップネスを反映
  • ・「2 DICE」「13 TELL ME」のギターソロはエックスジャパン(X JAPAN)風のハモリフレーズ

「曲解説」

1 PSYCHOMMUNITY

X JAPANのメジャーファーストアルバム「BLUE BLOOD」に収録されているオープニング「PROLOGUE (〜WORLD ANTHEM)」を思わせる曲で、「中世ヨーロッパに建てられたドイツの古城」のような叙情性を放つHRインスト。
2 DICE

当時の日本のメジャーシーンでは「斬新すぎたインダストリアル・ビート」を大胆に反映させたファストチューン。ギターサウンドは「金縛りのようなメタリックな音響」となっており「叩きつけるような直線的なビート」が大きな存在感を放っている。歌詞は「目の前にうつる全てが化け物に見える」尖ったセンスをもつ異端な10代に対するメッセージソングのようなイメージで「世間や大人に縛られず自分の思い描く花を咲かせればいい」という内容(1:10〜)「13 TELL ME」同様にX JAPAN風の流麗なハモリギターソロが登場(2:28〜)「ピィ〜、ピィ〜」というフィードバックノイズが鳴り響き最後までアグレッシヴに攻めきる。
4 EYES LOVE YOU <T.T.VERSION>

「80年代UKギターポップ」のような透明感とメロウネスを感じる曲だが歌詞には「絶望」や「狂気」という過激な言葉が登場して不思議なミスマッチがある。この曲のクリーンなギターフレーズはX JAPANでは聴けない類のものであり当時ファンに大きな衝撃を与えたハズだ。
5 D.O.D.(DRINK OR DIE)

ザクザクしたスラッシュメタル・リフが空間を切り裂く凶暴なハードコアチューン。hideの声にもエフェクトがかけられており、サビではhideが得意としている「早口呪文歌唱」が冴え渡る。「2 DICE」同様に海外のインダストリ系アーティスト/ミニストリー(Ministry)からの影響を感じる「コアなインダストリ感」を導入しているが「おもちゃ」のようなポップネスも同時に感じる事ができる曲となっている(1:54〜)ブレイクの後、BPMが倍速位に速くなりスラッシュに畳み掛ける。
7 DOUBT <REMIX VERSION>

「サイバーな爆発」のような強烈な歪みが炸裂するサイボーグロックの名曲。終始「分厚いモザイク」のような音響感でhideのボーカルにはやはりエフェクトがかけられており間違いなく「シラフではないブチ切れたテンション」で狂ったように畳み掛ける。「俺とよく似た歌うたい」なる歌詞からおそらくではあるが、自分(hide)のスタイルを表面的になぞってアナーキーを気取っている痛い人達を痛烈に批判していると思われる。そんな気がする。
8 A STORY

「よく晴れた夏の日のメランコリックな思い出」のような浮遊系バラード。ワルツ調の流れるようなアコースティックサウンドを導入しており、hideの音楽的なキャパシティーの大きさに驚く。
9 FROZEN BUG ’93 <DIGGERS VERSION>

「壊れたラジオ」のような無秩序な歪みが歪(いびつ)な空間を構築する曲。ボーカルラインは「ミニマムなヘヴィリフ」のようだし、サウンド的にも「かき混ぜたグランジロック」のようなイメージなのだが不思議とポップな響きを感じるhideマジックを堪能できる(2:35〜)「悲鳴を洗濯機にぶち込んだ」ようなアバンギャルドノイズが登場、その後は「享楽的なバカンス」のようなトロピカルサウンドが鳴り響きアクセントとなる。
11 BLUE SKY COMPLEX

タイトル通り「BLUEなSKY」を連想するホーンセクションを大胆にフィーチャーしており、アグレッシヴなハードサウンドとホーンセクションが「仲良く喧嘩している」ようなイメージの曲で「音同士が殺しあわないギリギリの距離感」が面白い。
14 HONEY BLADE

「穏やかヴァース」→「アグレッシヴなサビ」に移行するグランジソング(2:15〜)ルナシー(LUNASEA)のインディーズ時代の名曲「CHESS」における 「ダークでミステリアスな語り」と共通する語りパートが挿入される。「神」というフレーズも登場。。hideによる愛のある後輩イジリだと思われる。
15 50% & 50% <CRISTAL LAKE VERSION>

ラテン調のアコースティックサウンドが印象的なリミックス。牧歌的なバイオリンの音色や軽やかなパーカッションの響きが「田舎の花畑」のような空気感を醸し出しす(3:52〜)「のどかな空気」を引き裂くように突如、アグレッシヴなハードサウンドが鳴り響く展開はインパクト大。

X JAPANのカリスマギタリストhideのソロデビューアルバムであり「インダストリアル」「オルタナ」「グランジ」などのハードな歪みを大胆に取り入れた作風となっている。 hideの魅力はエッジのたったサウンドやマニアックな響きを主にしたサウンドを作りつつも、そこに「おもちゃ」や「ゲームセンター」のようなポップネスを反映できる点であろう。80年代UKギターポップのような「4 EYES LOVE YO

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「1 月世界」
「本当に月にいる」ような錯覚を味わえる音響に相当な拘りを感じるタイトルトラック。リズムアプローチは「月に足跡を残す」ような淡々としたシンプルなビートであり「空間を漂うアルペジオ」「闇のような重たさを感じる歪み」などギターサウンドにもテーマである「月」のような冷たさと無重力感がしっかりと反映されている。歌詞は「思いついた言葉を羅列した」ようなイメージであり、ボーカルラインは「どこがメロ」で「どこがサビ」なのか曖昧なものとなっている。この曲をシングルカットでリリースするあたりさすがB-Tである。

「2 My baby Japanese」
「コンクリートに頭を打ち付ける」ような強烈なパンチを感じるスローなリズムがインパクト大のサイケなインダストリアルチューン。気のせいかもしれないがこの曲でも「月」を思わせる音響を感じる事ができる。歌詞のほうは「強烈なサウンド以上に強烈」なものとなっており「赤い髪を振り乱し」「頭を叩きつけ」「花園で踊る夢を見ている」などの過激な歌詞が登場する。並のイマジネーションではどのようなシュチュエーションなのか判断がつかないものとなっており、見事にアブノーマルなアナザーサイドを描いている。

「3 無知の涙 HOT remix #001 for B-T」
布袋寅泰がはじめてリミックスを担当した記念すべき曲。 サイバーでメタリックな質感の原曲をジェル状にしたようなインパクト大のサウンドを聴かせてくれる。 ギターリフ以外は原曲のサウンドをまったく踏襲しておらずサウンドを再構築している。 この曲のサウンドを音楽レビュアーっぽく表現すると「ディープでサイバーな布袋流アシッドハウス」といったイメージである。 冒頭で聴ける「上空を舞うヘリコプターの音」は無条件に「布袋寅泰が上空から舞い降りる」イメージが頭の中に浮かぶ。 (3:54〜)「波動砲を音楽化した」ようなアバンギャルド・サウンドがリスナーの脳を刺激する。 終盤は「マシンガン抱いてスローダンス」というシュールワードが呪文のようにリフレインされる。

    「要点」

  • ・「1 月世界」「本当に月にいる」ような錯覚を味わえる音響に相当な拘りを感じる
  • ・「3 無知の涙 HOT remix #001 for B-T」布袋寅泰がはじめてリミックスを担当した記念すべき曲

「1 月世界」 「本当に月にいる」ような錯覚を味わえる音響に相当な拘りを感じるタイトルトラック。リズムアプローチは「月に足跡を残す」ような淡々としたシンプルなビートであり「空間を漂うアルペジオ」「闇のような重たさを感じる歪み」などギターサウンドにもテーマである「月」のような冷たさと無重力感がしっかりと反映されている。歌詞は「思いついた言葉を羅列した」ようなイメージであり、ボーカルラインは「どこがメ

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シリアスで張り詰めた空気感があった前作・全前作の反動からか全体を通してラフな印象をうけるアルバムとなっており、ミニストリー(Ministry)やナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)などからの影響を感じる強烈に歪んだインダストリアル・サウンドやエイフェックス・ツイン (Aphex Twin)以降のエレクトロニカ・サウンドなどを曲に反映させている。

また本作は「シリアスなサウンドにシュールな歌詞を乗せるという方法論」を試した作品でもあると思われ「2 キャンディ」「3 チョコレート」の歌詞は「櫻井敦司(vo)どうしたの?!」と 一瞬思ってしまう「不気味な甘さ」を感じるし「5 Tight Rope」における「ゆらゆらら」というラインはコミカルですらある。

本作を一言で言うなら「模索」という表現がぴったりではないかと思う。

    「要点」

  • ・前作の反動からか全体を通してラフな印象をうけるアルバム
  • ・これまでにはない「不気味な甘さ」を感じる歌詞が登場

「曲解説」

1 Maria

不思議な重力感を感じる歪んだロックチューン。ドラムの音色が非常に鮮やかでリスナーの耳にダイレクトに突き刺さってくる。ギターサウンドは前作とは異なる質感で「ダーク×耽美」なB-Tクラシカルなトーンとなっている。
2 キャンディ

ミニストリー(Ministry)やナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)からの影響を感じる「インダストリアルな歪み」を強調したノイズチューン。ザラつくノイズサウンドとは対照的に櫻井敦司(vo)のボーカルには半透明のように響く音響処理が施されている。凶暴なノイズサウンドにのせて歌われる歌詞は「キャンディー=君」という前作からは考えられない色んな意味で甘い内容となっている。
3 チョコレート

「地を這う」ような低音ギターリフが印象的なインダストリアル・チューンでまるで「戦場にいる」ようなカオス感を感じる曲となっている。歌詞の内容は意味不明(0:56〜、2:36〜)「DJスクラッチをサイケ×メロディックにアレンジした」ようなセンス抜群のギターサウンドが「濃厚なチョコレート」のように響き渡る。
5 Tight Rope

「雲の中にいる」ような白さを感じるアンビエントテクノソング。曲を通してシリアスで神聖な雰囲気を感じるサウンドが展開されるが、反面、歌詞は軽やかで「ゆらゆらら」なるラインが登場。シリアスなサウンドにシュールな歌詞をのせる方法論は、鳴っているサウンドは全く異なるが「2 キャンディ」「3 チョコレート」と同様であると感じる。
6 idol

表情豊かでデリケートな電子音とシンプルなギターロックが並行する曲。本作の中で最もシンプルであり、サビは「破壊」「神」というワードが登場するがメロディックでつい口ずさみたくなる類のものとなっている。
7 Living on the Net

「ストリート感のあるHIP HOPをB-T流にアレンジした」ような曲でジャンクで壊れたなサウンドで埋め尽くされている。今井寿(g)によるラップ風・早口歌唱も登場。
9 IN

リバーヴのかかった音響が印象的な耽美ギターポップ。揺らめくスローなギターサウンドが終始鳴り響き「ハワイの海辺」のような空気感を演出している。
10 Ash-ra

タイトなビートとド派手なサビのボーカルラインが印象的なスピードチューン。ベースがミニマムなリフを奏でツインギターは「サイバー×耽美」な空間構築に徹している。「全て呪うような愛のリズムで熱いダンスを踊ろう」という無理難題をあなたに提案する歌詞はミステリアスとしか言いようがないものである。(3:50〜)これまでの激しさが嘘のように「バラの花びらが揺れて床に落ちるまでを超スローにしたようなピアノによる静パートが挿入される。
11 COSMOS

「夢見心地な音響」と「全てを包み込むような優しさ」が同居した浮遊感たっぷりのB-T流エレクトロニカソング(3:58〜)「ラストソングだからこのまましっとり終わるだろう」というリスナーの気持ちを見透かすように縮れたノイズサウンドが空気を乱す。最後は「全てが宇宙にかえる」ような静けさで幕をとじる。

シリアスで張り詰めた空気感があった前作・全前作の反動からか全体を通してラフな印象をうけるアルバムとなっており、ミニストリー(Ministry)やナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)などからの影響を感じる強烈に歪んだインダストリアル・サウンドやエイフェックス・ツイン (Aphex Twin)以降のエレクトロニカ・サウンドなどを曲に反映させている。 また本作は「シリアスなサウンド

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「これまでリリースしたアルバムは本気を出していなかったのか?!」と思えるほどに劇的な変化を見せた傑作アルバム。

「サイバーな質感』「地下の実験室のような不穏な空気感」「未知の生物が誕生したかのような獣的な爆発性」といった要素を持つハードでアバンギャルドな側面と「6 JUPITER」「7 さくら」で聴けるような浮遊感を感じる独自のバラードが絶妙なバランスで配置されている。

デビュー作〜アルバム「悪の華」までに彼らが作り上げた「ギクシャクしたニューウェイブ×ビートロック」の良いところを継承しつつ一線を超えたダークサイドに足を踏み入れている。wikiを見ると今作からメインソングライターの今井寿(g)が本格的に機材を揃え曲作りをはじめたり、ギターシンセを使うようになったそうだ。本作以前は作りたい音はあるのだが今井寿(g)の意図がメンバーや制作関係者に伝わらず本領を発揮できていなかったのだろうと思われる。

アメリカの音楽シーンに激震が走った91年は日本でもバクチク(BUCK-TICK)やルナシー(LUNASEA)などがニューウェイブの独自進化のような問題作をリリースし後続のアーティストに多大な影響を与えた。バクチク(BUCK-TICK)は今作を境にダークサイドのどっぷり使ったアルバムを数作リリースすることになる。

    「要点」

  • ダークサイドに足を踏み入れたサイバーな狂った質感が魅力
  • 今井寿(g)のイメージが明確に具体化できたアルバム

「曲解説」

2 MACHINE

サイバー質感と疾走感を感じることができるハードなニューウェイブチューン。「タカ、タカ、タカ、タカ」という一人時間差のようなギターフレーズがニューウェイブ風。前半は低音を活かした歌声でダークに淡々と展開されるが(1:52〜)不穏なノイズと「宙に浮かぶ近未来のバイクに乗っている」かのようなサイバーな疾走感を味わえるギターソロの出現で状況が一変する。ギターソロは以降は、前半と同じボーカルラインが少し狂ったようなテンションで歌われサウンドも近未来のバイクにのって高速を疾走するイメージを連想できるスピード感がある。
3 MY FUNNY VALENTINE

「ダークでサイバーな地下の実験室」のようなミドルテンポの曲。ツインギターが絡みつくように不穏な響きを奏で、また未知の生物が誕生したかのような電子音が不気味さを演出する(1:58〜)「ダークな世界観にそよ風が入り込む」ような安堵感を感じるサビのボーカルラインが歌われるが、ツインギターはサビでも容赦なく耽美的でダークなフレーズを奏でる(3:08〜)暗い部屋の中で輝く「極彩色の光」のようなギターソロが登場。終盤は開放的なサビが2回繰り返されるが曲のダークさは一貫している。
4 変身[REBORN]

「地下の実験室で生まれた未知の生物が暴れ始めた」ような狂気的なスピードチューン。ダークな静寂の中で不穏でな電子音が鳴り響く展開、この空気を「制御不能な光線のようなサイバーなサウンドが切り裂く。曲を通してこのサイバーなギターサウンドが暴れまくる(2:01〜)人間不信を思わせるような狂気的なシャウトが響く(2:20〜)一旦、冷静になったような淡々としたアルペジオが流れるが、その後、すぐに「全てを切り刻むノコギリ」のようなギターソロが鳴り響く。終盤はこれまで以上にハードになりカオスな様相を呈し(3:52〜)この世の終焉を告げるような消防車のようなサイレンが響く中、最後は櫻井 敦司(vo)の掠れたシャウトで幕を閉じる。
6 JUPITER

聖母マリアのような幽玄なコーラスと星野英彦(g)による12弦ギターのコードが印象的な名バラード。曲を通して神聖でシリアスな雰囲気が漂い、音から眩しすぎる光を感じることが出来る。櫻井 敦司(vo)の歌声はセンチメンタルかつエモーショナル。歌詞の内容は「亡くなった母親の事」と「自身の後悔」について歌っている(2:36〜)今井寿(g)のギターソロが始まるがサビのボーカルラインをなぞった珍しく?!シンプルなものになっている。(3:08〜)「雅」という言葉がぴったりのチェロのメロディーが登場し曲に柔らかい春風が吹く。最後は全ての風が止まり静かに終わる。
7 さくら

「天空の城」を思わせる雅で浮遊感のあるミドルテンポの曲。ヴァースは「天空の城から見渡す夜空」のように涼しい展開で、きらめく星のようなキーボードも散りばめられている(2:17〜)「ちぎれた身体」「ごまかす痛み」という過激な歌詞を合図にサウンドは熱量を帯び始めるが、サビのボーカルラインは淡々とした語りのようなものとなっている。この曲の歌詞も「後悔」がテーマになっていると思われる。(5:20〜)この曲も今井寿(g)のギターソロもボーカルラインをなぞったシンプルなものになっている。「6 JUPITER」同様に「この曲は「歌」を聴かせる曲だ」という無言のメッセージを感じる。
8 Brain,Whisper,Head,Hate is noise

密室で行われる未知の生物の生誕祭のような怪しい雰囲気。今井寿(g)によるアナーキーなラップ風ボイスも登場する実験的な曲。ヤガミトール(dr)によるレッド・ツェッペリン(LED ZEPPELIN)風のヨレた質感のドラムが不思議とマッチしている。91年の日本のメジャーシーンでこの曲を演れるのは色んな意味でB-Tだけだと思う。
9 MAD

ミニマムで歪んだギターリフがリフレインされるサイバーパンク。脳みそを刺激する神経質で電流のようなノイズがあらわれては消え、BPMはゆったりとしているがマッハの速度を感じる事ができる。歌詞の内容は「狂っている事に気づいていない男」による嘆きというところだろうか。
10 地下室のメロディー

「パンドラの箱が開いたような不吉な電子音で幕をあけるB-T流デジタルハードコア。エフェクトのかかった櫻井 敦司(vo)の捲したてるようなボーカルは正体不明の黒い物体に追いかけられるような恐怖を感じる。(1:53〜)淡々としたサビの後は一時的に「全てが終わったような終幕感」が流れ、「電気で動く鳥のさえずり」のような直線的な電子音が鳴り響く。(2:15〜)ギターソロの後ろでは「やばい液体が溢れた」ようなノイズが鳴っている。

「これまでリリースしたアルバムは本気を出していなかったのか?!」と思えるほどに劇的な変化を見せた傑作アルバム。 「サイバーな質感』「地下の実験室のような不穏な空気感」「未知の生物が誕生したかのような獣的な爆発性」といった要素を持つハードでアバンギャルドな側面と「6 JUPITER」「7 さくら」で聴けるような浮遊感を感じる独自のバラードが絶妙なバランスで配置されている。 デビュー作〜アルバム「悪の

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