モザイクがかかったカラフルなアルバムジャケットから極彩色のようなサイケデリックサウンド想像していたのだが実際に聴いてみると「海の中」にいるような浮遊感やクーラ・シェイカー(Kula Shaker)と共通するようなオリエンタルな雰囲気を感じるデビューアルバム。
ギターサウンドは空間構築に徹しており煌びやかなオルガンや立体的なベースラインがよく目立つサウンドで、ザ・スミス(The Smiths)などのニューウェイブアーティストのようなメランコリックさもある。
アシッドハウスからの影響をがっつり受けているのかと思いきや実験的な数曲を除いてはそこまで影響を感じないというのが正直なところである。同世代にザ・ストーン・ローゼズ(The Stone Roses)、プライマル・スクリーム(Primal Scream)、ハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)というヤバイ奴らがいる為、過小評価されている感は否めない。
「曲解説」
1 You're Not Very Well
「黄金の宮殿」を思わせるオルガン(キーボード)の音色がオリエンタルな雰囲気を演出しているオープニングソング。サイケなギターサウンドも聴けるがハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)などと比較した場合、パンク的で直線的な音像である(1:58〜)短いギターソロは「底が見えない落とし穴に落ちた」ようにミステリアス。
2 White Shirt
「気だるいピクニック」のような雰囲気のサイケポップ。脱力感のあるボーカルラインはメロウなメロディーを奏でサビでは「やまびこ」のようなコーラスも飛び出す。ロブ・コリンズ(key)による「夏の木漏れ日」のようなオルガン(キーボード)が曲に少しセンチメンタルな雰囲気を与えている。
3 The Only One I Know
「海の中にいる」ような透明なブルーを感じるサイケでメロウな曲。「黄色しか存在しない信号機」のようなミニマムなキーボードリフが淡々と鳴り響く中をメロウで浮遊感を感じるボーカルラインが踊る(1:08〜、2:12〜)海の中に差し込む日光のようなデリケートなギターサウンドがサイケで(2:45〜)唐突に登場する立体的なベースラインは曲に重力を与える。
4 Opportunity
白昼夢のような眩しさと宙に浮いているような脱力感を感じるフリーセンションのような曲。パーカッショナルなリズムと黄金のベールのようなオルガン(キーボード)がオリエンタルな雰囲気を醸し出す(2:47〜)これまで空間構築に徹していたギターが微妙な湿り気を帯びた浮遊感のあるフレーズを奏でるが、その音はすぐに煙となってオリエンタルな空気感に溶け込む(4:33〜)「テレビの砂嵐」のようなギターサウンドが曲の浮遊感を更に高める。ボーカルラインは終始、儚い祈りのようなメロディーであり、最後は「カラスの声をアシッドハウス風にアレンジした」ようなサイケな音に包まれる終わる。
5 Then
メランコリックな雰囲気を持つダウナーな曲。クルクルと回るベースラインが中心となり展開される曲で、サビ前に鳴らされる「ガラスの破片」のようにきらめくギターサウンドは眩しすぎる。
6 109 Pt.2
宇宙のような雰囲気を持つアシッドハウスチックなインスト。中盤まではスペーシーな音の断片が次々に現れ頭の中に様々なイメージが湧くという浮遊感のある展開だが(1:54〜)マーチ風のブレイクビーツが鳴り響くのを境にディープな質感を持ち始める。最後は「全ての音が宇宙に吸い込まれる」ように静かに終わる。
7 Polar Bear
アシッドハウス的なフィーリングを持つ実験的な音響系ソング。「スライム」のように弾力のある潤ったリズムが終始リフレインされ、少しモザイクがかかったようなオルガン(キーボード)やエフェクティヴなギターサウンドが空間を構築する。
10 Sonic
気怠さとミステリアスな雰囲気が同居しているダークな曲でウェットで重いベースラインを中心に展開される。「雨の匂い」のようなギターフレーズとは対照的にオルガン(キーボード)の音色は煌びやかな為、ダークな質感ではあるがメロディックなポップスを聴いた後のようなあっさり感がある。