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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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デビュー作でメディアから「オアシス以来のベスト・デビュー・アルバム」と絶賛(wiki)されたマンサン(Mansun)。その評価も納得の耽美だが力強いメロディーセンスを持つアーティストでありポール・ドレイパー(vo)の歌声には艶がある。

ブラー(Blur)やスピリチュアライズド(Spiritualized)が「プログレッシヴ」や「アバンギャルド」とも言ってもいい作品をリリースした97年〜98年の音楽シーンにおいてマンサン(Mansun)もまた彼らに負けない位の手の込んだ作品をリリースした。全編を通して「転調」や「1曲の中に対照的な展開を盛り込む」事をデフォルト化しているかのような作品。アルバムジャケットで気難しそうな男が辞典のようなものを読んでいるが、「本の世界を旅する」ような音楽が今作のテーマなのでは??と思われる。それ位に様々な情景やイメージが湧いてくるプログレッシヴなサウンド。色んな意味で過剰(収録時間70分超)な作品なのでリスナーの気分によって評価が左右されると思うが、2ndアルバムでビジネス的に一番大事な時に「プログレな大作」をリリースした彼らのアーティスト魂にはおそれいる。

    「要点」

  • 「本の世界を旅する」ような音楽
  • 2nアルバムでプログレ大作

「曲解説」

1 Six

1曲目から収録時間8分超えのプレグレ曲。透明感のあるミニマムなピアノの旋律が鳴り響く中、ポール・ドレイパー(vo)が耽美的だがキャッチーなボーカルラインを歌い上げる。時折、ハードでアグレッシヴなギターロックサウンドが挿入される(2:40〜)唐突に「本の世界に迷い込んだ」ような「何もない真っ白な空間」を思わせる静けさがやってくるが、また唐突にハードなギターロックに戻るという展開を見せバーストしたようなギターノイズが鳴り響く。ノイズが鳴り響いた後は「これまでの事」が何もなかったかのようにポール・ドレイパー(vo)が耽美的なボーカルラインをしっとりと歌いあげるという色んな意味でやりすぎな展開だが抜群のボーカルラインと艶のあるポール・ドレイパー(vo)の声がこの展開をポップスとして成立させている。
2 Negative

タイトルがNegative(ネガティブ)そしてアンプのハウリングからはじまるという展開から一瞬「グランジへの回答」と思わせるのだが、その期待はわずか15秒で裏切られグランジの「グ」の文字もない、スピリチュアライズド(Spiritualized)の名作Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space(宇宙遊泳)と共振するかのようなスペーシーで時空が歪んだようなアバンギャルドなサウンドを展開する。だがこれもまた不思議とポップとして成立している。
3 Shotgun

スーパーグラス(Supergrass)のようなメロウなメロディーをもつギターポップではじまる曲。「1曲目2曲目凝ってたから3曲目はストレートポップソングか?!」と思ったのだがやはりこのバンドはそんなに甘くなかった。1分頃から10倍の重力空間に放り出されたような不思議な重さがある展開になり1:30分頃からは、オリエンタルな雰囲気のアルペジオと枯れたギターサウンドが顔を出しバックでは「ビデオテープを早送りしている」かのような音が流れ、そして3:05分頃からはシュールな夢でも見ているようなぼやけた光のような音に包まれる。最後は「見知らぬ異国を一人さまよい歩く老人」のような孤独な音色で幕を閉じる。
4 Inverse Midas

物悲しいピアノとボーカルだけで構成されポール・ドレイパー(vo)がボーカルラインをしっとりと歌い上げる。「シンプルにそのまま終わるわけがない」というリスナーの心理を逆手にとり「フェイクしない事が逆にフェイク」になっている曲。
9 Witness to a Murder

オリエンタルでミニマムなアルペジオのループをバックにヒステリーな女性オペラの歌手のボーカルと「ニュースキャスター」を思わせる男の語りだけで構成された曲。タイトルは和訳で「殺人を目撃した」ん〜なるほど。
11 Special / Blown It

北欧の自然を連想する荒涼感のあるエレクトロニカ以降のサウンドとアグレッシヴなギターロックが交互に繰り返される曲。最後はバンド演奏がピタリととまり鳥のさえずりが聴こえる。

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