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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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言葉本来の意味でのオルタナティヴ(代案)を体現するアーティスト/ベック(Beck)。HIP HOPのビート感、変幻自在な電子音、アバンギャルドなノイズなどあらゆる音楽の面白いところ曲に反映させるベック(Beck)サウンドは唯一無二。子供のように音楽で好き勝手に遊び、そのサウンドを冷静に楽曲に落とし込んだようなイメージなので、「ごった煮サウンド」であっても無印良品のアイテムのように「シャープでシンプルなポップミュージック」として成立している。

またこれだけ様々な要素を反映しているにも関わらず全編を通してカントリーのような牧歌的でのどかな雰囲気を一貫して感じることができる点に相当なこだわりを感じる。90年代的なジャンルのクロスオーバーを象徴するような1枚と言える。

    「要点」

  • ごった煮サウンド
  • 複雑だが「シャープでシンプルなポップミュージック」
  • 全編を通してカントリーのような空気感
1 Devils Haircut

序盤はウォームで少し歪んだリフと淡々としたビートで進行(0:46〜)「意外な登場人物が現れた」ような効果音が鳴りビートがブレイクビーツに移行。ブレイクビーツ登場以降は、「ドリーミーな電子音」や「ドアノブを回すような幽かなノイズ」などが登場し夢心地な雰囲気となるが、その空気感の中で(2:58〜)マニアックなエフェクトをかけたシャウトが登場。「僅かなグランジ匂」を残し曲は終了する。
2 Hotwax

フォーク調のギターサウンドとアナログでゆったりしたビートの上をリラックスしたベック(Beck)流のラップが乗る。ソニック・ユース(Sonic Youth)彷彿のアバンギャルドノイズが頻繁に登場し曲をカオスにする。電子加工された管楽器のような音色やDJのスクラッチのような音も挿入されるサウンドはまさに「ごった煮」(3:11〜) そんな「ごった煮サウンド」を遮るように「夕暮れ時」のような雰囲気が流れ「小鳥のさえずり」がはじまる。曲はそのままの雰囲気で最後は「沈む夕日」のようにしっとりと終わる。
3 Lord Only Knows

「老人の叫び声」のような声で幕をあける。終始鳴り続ける僅かに歪んだ音響は「夏の終わりのビーチにいる」かのようにメロウでノスタルジーな雰囲気を醸し出す(1:26〜)ビートが強調されて枯れた味わいのあるギターソロが流れる。終盤、音響の歪みが増幅され「電子の海」と化すがそこに(3:38〜)フラメンコギターのようなラテンな流れる旋律が流れる。それを皮切りにアバンギャルドノイズが流れ曲をズタズタに切り裂く。
5 Derelict

「砕けたクリスタル」のような神秘的でデリケートな電子音が流れる中をベック(Beck)の歪んだ気だるいラップが乗る(1:50〜)リズムが複雑性が増して、まるでダブ・ステップのようなリズムに一時かわる。そこに(2:05〜)中東を連想する「煙」のようなラッパの音が流れる。終盤は中東的な雰囲気が全体を支配して全てを包むように曲は終わる。
6 Novacane

「沈む夕日」のようなカントリー調ではじまるが(0:20〜)シュールな祝祭のような電子音の登場を皮切りにヘヴィなギターと神経質で小刻みでビートが登場。オルタナサウンドと歪んだラップを中心に展開される(1:25〜)デジタルな太陽光線のようなノイズが鳴り響く(2:05〜)一瞬のブレイクの後にDJスクラッチが顔を出し、そこから冒頭のカントリー調もあらわれる展開。終盤はアバンギャルドな音が順繰りに登場し鳴り響く。もはや冒頭の「沈む夕日」のようなカントリー調の姿は跡形もない。
9 Minus

ギターだけではなく音響全体が歪んでいるようなベック流オルタナソング(1:00〜)リズムがぐっとスローになり「70年代ハードロック」のような展開になるが、すぐにまた元の展開に戻る。終盤はハードなオルタナサウンドとキラキラした電子音が絡まる。
11 Readymade

ゆったりしたHIP HOPのビートと気だるくヨレたギターリフで展開される。キラキラした電子音や「軍歌」のようなラッパの音色も登場。ベックのボーカルも淡々として抑揚のない落ち着いたものになっているが、この淡々とした変化のなさがアバンギャルドな本作の中では異質。

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