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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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海外渡航(イギリス・ドイツ)時に得たインスピレーションから作成された楽曲を収録した5枚目のアルバム。

これまでもインディーズ時代のアルバム「DUNE」や3枚目のアルバム「heavenly」で異国感を感じる音創りをしていた彼らだが、今作では「ダークで重厚な質感」や「叙情性のあるフレージング」などの要素を取り入れている。それに加え「ジャジーなテイスト」や「USグランジ・オルタナ」からの影響をラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)らしいメロディックな曲に反映させることによってこれまでの作品とは異なるレベルのダイナミズムや深さを感じることができる作品に仕上がっている。「歪んだマイナーコードの響きを活かしたギターロック」「景色が浮かぶメロウなポップソング」「ドイツの大河を連想するスケールの大きな曲」など様々なタイプの曲が収録されているが全ての曲のクオリティーが非常に高く本作は彼らの最高傑作と呼べる作品になっている。

    「要点」

  • ドイツ大河や古城を思わせる異国感
  • ジャジーな質感を導入
  • 最高傑作との呼び声が高い

「曲解説」

1 LORELEY

極寒のような冷たいピアノとダークで重層な雰囲気が印象的なオープングソング。ken(g)のギターサウンドが曲のダークさと緊張感を演出している。 冒頭では不穏で緊張感のあるサックスが空気を切り裂き、そこからゆったりとしたテンポの上を滑らかなhyde(vo)のボーカルラインが踊り、徐々に熱量を上げていく。Bメロの裏ではこれまであまり聴けなかったスマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)のようなオクターブ奏法により歪んだギターリフを聴くことができ、サビは煌びやかなシンセとうねるベースラインの上をどこまで果てしなく続く大河のような壮大なボーカルラインが響き渡る。中世ヨーロッパのような雰囲気を持ちつつもUSオルタナ的な「エッジ」が反映されている神曲。最後は不穏なコクのあるアルペジオが静かに鳴り響く。
2 winter fall

実際に「真っ白な雪原にいる」かのような錯覚を味わえる曲。ガラスのように透明なアルペジオと優雅なホーンを中心に展開される。 メロディックで「真っ白な吐息」を連想するボーカルラインを持つサビがインパクト大(2:45〜)「雪の上に寝そべって見る晴天の青空がクルクルと回る」ようなイメージが浮かぶスケールの大きい伸びやかなボーカルラインが曲に躍動感を与え(3:08〜)ギターソロは暖炉に手をかざすような暖かさを感じる。曲を通して「どこまでも続く青空」「降り積もる雪」「凍える寒さ」「白い吐息」といった雰囲気を醸し出すフレーズや音色のみで構成されており世界観を見事に表現している。最後はhyde(vo)による「戻らない時間」のような物悲しい一人語りで終わる。
3 Singin’ in the Rain

「雨が降る都会の早朝」を連想するジャージーなピアノの旋律と微かな光のようなギタープレイがを中心に展開されるメロウな曲。 歌詞の中にもやはり「雨」が登場、歌詞の内容としては「降りしきる雨」が「雨が好きだった君」を思い起こさせるとういうもの(1:24〜)メロウな曲にぴったりな湿り気を帯びた力強いボーカルラインが曲の世界観をより確固なものとする。ボーカルラインの裏では残響のようなギターサウンドがノスタルジーな雰囲気を演出。終盤は「雨が激しくなった」ようなギターのノイズ音が薄っすらと鳴り響き、最後は水面に波紋を残すようなピアノの音で終わる。
4 Shout at the Devil

ラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)流グランジと言いたくなる歪んだギターロック。イントロからハウリングとhyde(vo)のカウントアップで幕を開ける激しい展開でken(vo)の開放的で歪んだギターフレーズが終始縦横無尽に暴れまわる。90年代後半はグランジ・オルタナ的な歪みを自分たちの曲に反映させる日本バンドが多かったが、この曲で聴けるken(g)のギターサウンドはジ・エッジ/U2(ユートゥー)がニルヴァーナ(Nirvana)のリフを弾いような音であり、ワウを効果的に使って飛翔感を感じるような質感になっていて個性がある(2:20〜)前作「True」までのhyde(vo)からは想像もできないようなまさにDevilなシャウトが登場する。それに続ギターソロに関してもグランジ的な壊れた質感を伴うものとなっている。終盤はリズム隊もグイグイと猛烈に攻めて最高潮を迎え最後は終焉のようなホーンが鳴り響き、僅かな不気味さを残し終わる。
5 虹

「蝶がクルクルと舞う」ようなミニマムなアルペジオが鳴り響く代表曲。言わずもがなバンド名を日本語に変換したタイトルとなっている。 イントロが終わると「いきなりサビから突入」する展開でインパクトがある。話が少しそれるが96年〜97年にかけて当時の3大バンド(L’Arc〜en〜Ciel、LUNASEA、GLAY)が揃ってサビから突入する代表曲をリリースしていることは大変興味深い。本曲は全体的にセンチメンタルな雰囲気のある曲となっており「静かで淡々としたAメロ」、「サビの爆発での予感させるBメロ」、「激しくエモーショナルなサビ」という構造になっている(2:38〜)メロウなアルペジオをバックにhyde(vo)の愛に対する悟りのような呟きが聴ける。終盤はエモーショナルなサビが繰り返しリピートされ最高潮を迎える。
7 Promised land

歪んだマイナー調の残響が心地よくハードでラフな曲なのだが不思議な浮遊感を感じる曲。よく聴いてみるとハードでラフなサウンドのバックに「柔らかい舞」のようなシンセや空間的なアルペジオが鳴っており、これがハードなサウンドなのにも関わらずハードに聴こえず浮遊感すら感じる仕掛けなのだろう(3:05〜)サイケデリックな揺れる光のようなサウンドに全体が包まれれるが、この後、光は消えてなくなりタイトで原始的なドラムが鳴り響く。終盤はフックのあるサビが繰り返されて最後はエフェクトのかかった声の残響で終わる。
8 fate

「ドイツの古城」を思わせる叙情系ギターフレーズと動きまくるベースフレーズが印象的なミドルテンポでダークな曲。マイナー調の歪んだギターサウンドが終始鳴り響き、曲を通して切ない雰囲気が漂う(1:30〜)hyde(vo)による高音を活かしたメロディックなボーカルラインを持つサビが強烈(1:50〜)残響が心地よくゆらゆらと宙を舞うギターソロが鳴り響き、間奏部では柔らかいストリングスやピアノ、煌びやかな電子音なども登場して切なさを更に助長する。終盤は柔らかいストリングスと煌びやかな電子音が更に存在感を増し最後はミニマムな電子音のループで終わる。この曲の終わり方はKarma Police/レディオヘッド(Radiohead)に近いものを感じる。

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