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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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「秋が近づく夏の海」のようなメランコリックな空気感と内省的な歌詞を持ち「ポップ」に対する挑戦を感じれられる3rdアルバム。

メランコリックではあるがポップでもあるという不思議なバランス感覚があり鳴っているサウンドは異なるがルナシー(LUNASEA)のアルバム「EDEN」に近いものがあると感じる。

「2 Vivid Colors」「7 夏の憂鬱」などには日本人の琴線に触れる歌謡性がありこれまでのラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)の曲に比べてメロディーが非常に頭に残る。ラルクサウンドのキーマンであるken(g)のギターサウンドは前作のような透明で耽美的な質感ではなく、コクがある哀愁感漂うサウンドを聴かせるがやはり煌びやかで曲に豊かな色彩を与えている。

気になるのはラストに収録されている「10 The Rain Leaves a Scar」の存在でアルバム全体に流れるメランコリックな質感もありつつもダイナミックに突き刺さる勢いを感じる曲となっている。このダイナミックな勢いは次作を暗示するものなのだろうか?

    「要点」

  • 「秋が近づく夏の海」のようなメランコリックな空気感と内省的な歌詞
  • メランコリックではあるがポップでもあるという不思議なバランス感覚

「曲解説」

1 Still I’m With You

後にリリースされるヒットシングル「DIVE TO BLUE」とも共通する軽やかさを持つポップソング。「空間を舞う」ようなギターワークとは対照的にベースラインはスローで「地を這う」ような質感である(2:12〜)タイトルである「Still I’m With You」というワードが「子守唄」のようにリフレインされる間奏パートを挟み、そのままギターソロに突入する。終盤はサビが何度も何度もリフレインされ、アウトロではken(g)が得意とする透明なディレイサウンドが登場して曲に彩りを与える。
2 Vivid Colors

エモい歌詞と「ライ麦畑」を連想する哀愁漂うサウンドが印象的なヒットシングル。(1:15〜 , 2:10〜 , 3:28〜)サビは知らない風景がビビッドに広がる歌詞を歌うボーカルラインと「田舎道を走るような列車」を思わせる軽やかでビビッドに歪むカッティングギターが絡む展開。前作までにはないポップネスを感じるサウンドと日本人の琴線に触れる「切なさ」「哀愁」を持つ歌詞が印象的でセンチメンタルな失恋をテーマにしていると思われる。インディーズアルバムのような密室感が嘘のように開放的な雰囲気を醸し出している。
3 and She Said

煌びやかなギターサウンドと連打されるオルガンが60年代サイケのようなロックチューン。wikiにはビートルズを意識した曲と書かれているがサウンドというより「迷いのない突き抜けたポップネス」がビートルズ的であると感じる。
4 ガラス玉

「真夏の夜の海」のような質感のセンチメンタルなバラードから「大空を羽ばたく鳥」のようなエモーショナルロックに移行するインパクト大の曲。「難解なパズル」のようなプログレ的な響きを持つつもメロディックなギターソロは、90年代ギターキッズにとってテクニカルの一つの基準にもなった名ソロである。終盤は「誰もいない海辺に静かに佇む男のつぶやき」のようなhyde(vo)のボーカルが存在を放つ。
5 Secret Signs

「黄金の宮殿」を連想する煌びやかサウンドとエロい歌詞を持つオリエンタルな質感の曲。シンセサウンドを大胆に導入しており、サビのバックではボーカルラインと「呪文」のようなシンセフレーズが並行し曲をミステリアスをしている(1:52〜)シンセによるソロパートまで飛び出す。
7 夏の憂鬱

日本人の琴線に触れる歌謡性を持つメランコリックソング。歌詞は過去の恋愛を引きずる男のナイーブな心情を歌っており、美化された過去に浸っている主人公が「もう秋が来るから」と強がって前に進もうとするが、やはりあなたを失った僕に降り注ぐ「夏の憂鬱」には抗えないという内容となっている。後に「夏の憂鬱 time to say good-bye」なるシングルがリリースされるが、筆者としてはアルバム収録されているオリジナル版「夏の憂鬱」のほうが素晴らしいと思う。
8 Cureless

キュアー(CURE)の耽美な曲をビートロックにアレンジしたような曲(0:40〜 , 1:46〜)愛し方を知らない主人公による嘆きが「交錯」のように響き、まるで「鏡の中の世界にいる」ような錯覚をおぼえる。サビの歌詞は「あなたを救いたいが傷つけてしまう」というなんとも切ない内容。
10 The Rain Leaves a Scar

ラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)が得意とする流れるような旋律を持つ耽美チューン。ザ・スミス(The Smiths)のような80年代UKギターサウンドをダイナミックに演奏したような曲で本作の中で最もストレートでアグレッシヴである。

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